スキャナカメラについて
- takahashi1041
- 2017年5月28日
- 読了時間: 6分
今更ながら、スキャナカメラについてまとめてみました。

調子に乗って取り付けたHASSELBLADのロゴ。ごめんなさい。
といっても、基礎となる部分を含めてほぼ全てraspyさん(http://d.hatena.ne.jp/spyuge/)を参考にしています。したがってraspyさんのサイトを見ていただいた方が100%の理解は出来ると思います。また重複している内容も多々あるかと思います。
とはいえ、恐らくraspyさんをはじめとした多くの(そもそも絶対数が少ないですが)日本人スキャナカメラ撮影者は静体の被写体を撮られる方ばかりなので、私みたいに動体メインで撮る人はかなり珍しいタイプだと思います。ということで、そんな動体をメインで撮影する人間のまとめとして見てもらえればと思います。
①カメラの特徴について
通常のフィルムやカメラのセンサーの代わりに、スキャナのセンサーが入っています。
スキャナのセンサーはラインセンサーです。
動かないもの(静体)を撮る場合は、超高画素機として使用することが可能です。
動くもの(動体)を撮る場合は、スキャナの動きに対して被写体の動きが加わることで、異次元の動きをします。

スキャナカメラといえば波。3600万画素相当の高画素機でもあります。

スキャンしている時間よりも早く被写体が動くと、歪むというより圧縮された効果を生み出します。
基本的に市販されているカメラではないので、殆どの人は自作で作製しています。
高精度な作製技術が要求されます(主にピント、スキャン送りスピードのギア比)。
特に中判フォーマットのフランジバックは舐めてはいけません。0.1mmズレるとピント合いません(私のカメラは無限合っていません)。
ちなみに私のスキャナカメラはオリジナルの機構として、スキャン中に(無理矢理)センサ位置を固定する事ができるようになっています。
この機構を生かすことで、スリットスキャン撮影で使用される2つの特徴を組み合わせた写真も撮影可能です。

スキャン中にセンサ位置を止めた例。
②スキャナカメラの分類
スキャナカメラは大分すると2つに分けられます。センサーがCIS(CMOS)か、CCDを使うかという違いです。
CIS型はスキャン時に被写体に光源を当てRGBの反射光を利用するという特性から、スキャナカメラではカラーで撮影ができません。
また素体が大きいため確実に8×10クラスのサイズになり、大判レンズでなければイメージサークルを使いきれません。 CIS型の特徴として、ISOベース感度がおよそISO1600〜3200ぐらいのため、大判カメラ用のレンズで絞りきっても苦になりにくいです。またCIS型はUSBバスパワーで動くものが多いので、パソコン次第ではバッテリーを必要としないメリットがあります。

CIS型スキャナカメラの例。モノクロームでしか撮影ができません。
CCD型はセンサーサイズが中判フォーマットに相当するので小型化が可能です。しかしながら電源を別系統から確保する必要があるのが最大のデメリットです。
またCIS型と違いカラーでの撮影が可能ですが、スキャン速度以上のスピードで流れる被写体に対してはRGBの色ズレが生じます。

CCD型の例。動いている被写体が、一部RGBに分割されてしまう。
③ソフトウェアおよびパソコンについて
純正ソフトも使えますが、私はvuescanというスキャナソフトを使用しています。
これは純正ソフト等では不可能な、スキャン中に「今どこをスキャンしているか」が容易に分かるという点で動体撮影で最強ソフトです。
また、通常のjpeg保存に加えてTIFF,DNG形式でのRAW保存も可能であり、RGBIでの64bit記録に対応可能です。有料ですが、恐らくこれ以上ないソフトではないでしょうか。

公式サイトからスクリーンショットを。
パソコンについては汎用PCであれば問題ないですが、処理能力で撮影テンポが大幅に変わります。raspyさんの作製していた時代と違い、今はwindowsタブレット端末が格安で売っているので機材を小さくまとめることが可能になりました。CPU処理能力が大きいパソコンの使用が推奨されます。
ただし後述もしますが、基本的に荷物が重くなりがちなスキャナカメラ撮影においてパソコンは小さい方が非常に楽です。

タブレットPCにすることで、かなりコンパクト…になっているハズです。。
④デメリットというか、大変なこと
これは非常に沢山ありますので、幾つかに分けて説明します。
1)扱いが大変 撮影技法上、三脚が必須です。雨にも弱いです。 また普通のカメラ以上に目立つので、街中で使うには割と勇気がいるかもしれません。怪しさでは他に類を見ないカメラであることは間違いありません。
そういう意味では、現代の大判カメラとも呼べるのかもしれません。使う上では不自由ばかりです。簡単には撮れませんし、大きいですし怪しいです。
そして何より重いです。カメラやレンズ、三脚に加えてパソコンとバッテリーが必要になります。機材の入れ方にもよりますが、長距離バックパッカー、登山者のような撮影になってしまいます。

故障した際に街中で分解している様子は、もはや不審者でしかないです。。
2)画素重視の撮影では、わずかな動きが命取りになる
超高画素機として使用する場合は、当然ながら「動く」被写体に対しては無力です。
わずかなブレ、動きにもシビアに反応してしまいます。
また、カメラの作り込みも作品に多大な影響を与えます。自分のスキャナカメラは作り込みが非常に甘いので、ピントの調整やノイズに毎回悩まされます。


冨士山の撮影と、そのクロップ。2400dpiで5億5線万画素。クロップすると、ピントが甘く、色ズレが見れる
3)色ズレ
CCDタイプではカラーの撮影が可能ですが、仕組み上同時に色を収集するわけではありません。
したがって、先に書いたように動体に対してRGBの色ズレが発生します。
これは動画や静止画から作製する方法では発生しないので、綺麗な色の変化を表すにはスキャナカメラは向いていません。
4)スキャン速度と画素数に律速される
スキャン速度と画素数は反比例の関係にあります。
スキャン速度を早める=画素数は低下する。逆に、スキャン速度を遅くするには画素数を上げるしかありません。
またスキャン速度の調整にも限界があり、早くするにも遅くするにも限界があります。
⑤それでも良かったと思えること
自分のステートメントである、「時間軸を写す写真」に近づけられる写真が撮れるようになったと思っています。
あらゆることを一から考える余地があるので、何を撮っていても、何をやっていても楽しいです。
またインパクト重視初めて見る人には「どうやって撮ったのか!?」という非常に大きなインパクトを残すことができます。
そして何より、大変な撮影大好きな人間としては、手のかかる装置=素晴らしい装置です。
撮った写真がどれも素敵に思えます。

最高の一枚が撮れた時の感動は半端じゃないです。
⑥まとめ

私自身まだ慣れてない撮影技法ではありますが、本当に色々やれる幅が大きくて楽しいです。
しかし技法としては面白い手法である反面、「何を、何故写真として残すのか」という写真の本質とも呼べるものに対し、非常に訴えにくいものがあると感じています。
また人によっては既知の技術であるため、技法だけしか見てもらえずに、そのバックグラウンドについて見てもらえないのが現状です。
結果的に私の場合は、自分のステートメントにあっていて、更に大変であることを楽しめるのかもしれません。
最後に、このカメラはraspyさんをはじめ、様々な先人の方々の知恵と工夫で成り立っています。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
Comentários